【1】めまい(平衡感覚異常) 私達の体は、目(視覚)、耳の奥の内耳(前庭覚)、脊髄などの深部知覚器(体性感覚)という3つのアンテナがあって、その情報(末梢感覚)を脳(中枢)でコントロールすることで体のバランスを保っています。自己の体が空間の中でどのような位置に存在するのかを認知することを「空間認知」と言いますが、正しく認知されなくなった状態(破綻をきたした状態)が、「めまい」となります。ですから、原因は何であれ、正常なバランスを保てなくなった状態(平衡感覚異常)はすべてめまいとなり、その状態は本人しか分かりません。 めまいの長さ(持続時間)も一瞬や数秒ほどの短いめまいから、数十分や数時間また数日間も持続する長いタイプまで、原因によって様々です。めまいの原因は多岐にわたりますが、大別すると、内耳の異常によるめまい(全体の4分の3)と、それ以外の異常によるめまい(脳や全身の病気に由来する異常)(全体の4分の1)に分けられます。まためまいの内容(性状)も、天井がグルグルと回る様な「回転性めまい」と、雲の上を歩いているようなフラフラする感じや頭がクラッとする感じの「非回転性めまい」に大別することが出来ます。自分のめまいの特徴を知ることで、早くめまいの診断に行き着くことが可能となります。以下に代表的なめまいの病気を挙げてみたいと思います。 内耳の病気 良性発作性頭位めまい症(BPPV): 内耳の三半規管や耳石器という場所の障害で発生します。三半規管は頭の位置や角度などを感じ取る器官ですが、耳石器からはがれ落ちたカルシウムの粒「耳石」が三半規管の中に入り、中で移動することでめまいを誘発します。具体的には頭を左右や前後、また上下に動かしたときにグルグル回るめまいが数秒~数10秒ほど続きます。短時間ですが頭を動かすたびに繰り返します。数日~数か月で一旦治癒しますが、再発することも多いです。 メニエール病: 内耳の蝸牛という場所でむくみ(内リンパ水腫)が発生することが原因とされる病気です。典型的な発作では、突然に「グルグルと回るめまい」が片側の耳鳴と難聴とともに起こります。一般にめまいは激しく数10分から数時間持続します。吐気や嘔吐を伴うことも多いです。 その他に、突発性難聴、前庭神経炎、中耳炎からきた内耳炎、聴神経腫瘍などがあります。 内耳以外の病気 脳卒中(脳梗塞、小脳梗塞、クモ膜下出血)、脳腫瘍、椎骨脳底動脈循環不全、起立性調節障害、貧血、不整脈、心因性めまい、片頭痛に伴うめまい、動揺病(乗り物酔い)などがあります。 <周囲の人ができることは> (1)ゆっくり休ませる(安静・臥位にさせる): 本人が楽な姿勢であれば、どんな姿勢でも構いません。楽な服装でゆっくりと休ませま しょう。もしも、手足の麻痺が疑われたなら、麻痺側の手足を上にして寝かせましょう。 (2)嘔吐に備える: 強いめまい発作ほど、吐き気を伴います。吐き気があるときは横向きに寝かせ、汚物で 喉をつまらせないようにします。そしてビニール袋、洗面器などを用意してください。 (3)症状をチェックする: めまいが起こったとき、一番重要なのは、脳の病気かどうかのチェックです。 めまい以外に以下のような症状が1つでもあれば、すぐに救急車を呼んで医療機関へ 連れて行くこと!脳卒中(脳梗塞、クモ膜下出血、小脳出血など)の可能性があります。 呼びかけても反応がない(意識障害)。 吐き気がとてもひどい(20分安静にしても軽減しない)。 頭痛がひどい(今まで経験したことのないほどの激しい頭痛)。 目が一方に寄って動かない、または物が二重に見える(動眼神経麻痺)。 ろれつが回らない(構音障害)。 片側の手足が急にしびれている、力がはいらない(手足の運動麻痺)。
【2】新型コロナウイルス(COVID-19)感染症について (1)現在の新型コロナウイルス感染症のオミクロン株の特徴・症状について 現在、流行している新型コロナウイルスはオミクロン株の変異型でKP.3というウイルスです。特徴としては感染力は以前として強く、症状としては発熱やのどの痛みが出やすいです。嗅覚障害や味覚障害はまれとなっています。上気道(鼻やのど)で増殖しやすく、逆に肺で増殖しにくいので、重症化率や致死率は高くはありません。ほとんどが飛沫感染でうつりますから、対策はこれまで通りマスクと手洗い、換気が基本となります。 (2)新型コロナウイルスの診断はどのように行うのか? 医療機関では、まず、問診(発熱などの症状、病歴)から新型コロナ感染の可能性を考えます。特に周囲の流行状況の情報は大事です。感染の可能性ありと判断すれば、「発熱外来」の受診を勧め、そこで新型コロナの検査(病原体検査)を行います。具体的な検査には大きく2種類あり、核酸検出検査(主にリアルタイムPCR検査:通称PCR検査)と抗原検査(主に抗原定性検査:迅速診断キット検査)です。検体(鼻汁や唾液)を採取する際、飛沫が飛び散り周囲の人への感染の危険性が高まるため一般の患者さんとは分けて行います。「発熱外来」はそのためにあります。 PCR検査はウイルス遺伝子を増幅検出する検査法で、鋭敏で精度が高く無症状者にも適応があります。しかし特殊な機械や熟練した技師さんが必要で、結果判定には数時間~1日かかります。また一旦、陽性になると数週間は持続(ある論文では80日以上持続)します。抗原定性検査はウイルス抗原(タンパク質)を検出する方法で、迅速性に優れ結果判定は8~15分ですが、無症状者は適応外です。最近は精度も高く90%以上の信頼性があります。ですから一般外来では、まず抗原検査を行い陽性なら確定、もしも陰性で症状などから否定できないと考えれば、次にPCR検査の追加を検討します。しかし5類感染症へ移行となってからは、PCR検査まで行うことはまれです。 (3)検査・治療の費用は? 2023年の5/8以降、新型コロナウイルスの検査や治療費(受診料、処方箋料など)は基本的には有料となりました。また新型コロナウイルス専用の抗生剤の内服・注射薬も、2023年10/1から有料となりました。それまで公費(無料)だった抗ウイルス剤(内服)は、3割負担の人は15000円~20000円以上/人かかるようになりました。 費用は抗原検査のみなら約1500円(3割負担者)位でしょう。治療は、特に基礎疾患がなく体力が十分ありそうなら対症療法となります。よって風邪で受診したときと同じくらいの医療費となります。 (4)自宅で行う新型コロナウイルスの検査について 自宅や職場などで新型コロナウイルスの抗原検査を行う場合は、必ず「医療用」(診断用医薬品)のキットを使用してください。その他は「研究用」と呼ばれ、粗悪品が多いため使用しないようにしてください。「医療用」は薬剤師がいる薬局またはドラッグストアなどで入手可能です(インターネットでは「医療用」まだ解禁されていません。入手出来ません)。